イッカボッグ・訳 by どら雲

JKローリング「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲:第53章

イッカボグ

JKローリングのイッカボッグ

本文中の挿絵は、子供たちからの応募作品の中から掲載させて頂きました。内容は抜かしているところもたくさんあり、荒っぽい訳なので、本が出版されたら、みなさん、ぜひ本物を楽しんでくださいね。

本の目次と登場人物の紹介は、「JKローリング新作「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲」をご覧ください。

(注)この記事内のカタカナ表記を含む表現文字は「どら雲」独自のもので、正式表記とは異なりますのでご了承ください。

「イッカボッグ」第五十三章:不思議な怪物

それから数日の間、四人はただ、イッカボッグが荷馬車から持ってきてくれる凍った食べ物を食べて、怪物が自分のために採ってきたキノコをたいらげる様子を見て過ごしました。けれどようやく、デイジー、バート、マーサ、そしてロデリックは、勇気を出して行動することにしました。

イッカボッグが出かけていくと、四人は集まって、奇妙な怪物のことを話し合ったのです。イッカボッグは出かける時にはいつも大きな岩を洞窟の入り口に転がして、四人が逃げられないようにしていました。岩の外でこっそり話を聞かれては困るので、四人はいつも小さな声で話し合いました。

まず話題になったのは、イッカボッグが男の子か女の子かということでした。デイジー、バート、そしてロデリックは男だと思いました。よく響く太い声だったからです。でも、飢えで家族を失う前は、羊の世話をしていたこともあったマーサは、イッカボッグは女の子だと言いました。

「おなかが大きくなってきてる。」とみんなに言いました。「赤ちゃんが生まれるんだと思う。」

そしてもう一つの話題はもちろん、イッカボッグが、いつ自分たちを食べようとするか、そしてその時には抵抗できるのかどうか、ということでした。

「当分は大丈夫だと思うな。」バートが言いました。デイジーとマーサが、孤児院にいた頃とあまり変わらず、やせっぽちだったからです。「君たちふたりは、まだおなかの足しにはなりそうもないからね。」

「まず俺が後ろから首をつかまえて、」ロデリックが身振り手振りで言いました、「そこでバートが思いっきり腹を殴れば・・」

「イッカボッグをやっつけることなんてできないわ、」デイジーが言いました。「自分と同じくらいの岩を転がせるのよ、とてもじゃないけどかなわない。」

「武器さえあったらな、」立ち上がると、小石を蹴って、バートが言いました。

「おかしいと思わない?」デイジーが言いました、「イッカボッグはキノコしか食べてないのよ。なんだかわざと怖い怪物のふりをしているような気がしない?」

「羊を食べるよ、」マーサが言いました。「羊を食べてないとしたら、どこからこの毛を手に入れたの?」

「イバラにひっかかった羊の毛を集めたとか?」柔らかくて白い毛をつまんで、デイジーが答えました。「やっぱりおかしいと思うの、もし生き物を食べて生きているなら、どうしてどこにも骨が残っていないのかな。」

「じゃあ毎晩歌ってるあの歌は?」バートが言いました。「ぞっとするんだよ、あれは戦の歌だよ。」

「私も怖くなる。」マーサが言いました。

「どんな意味なのかしら?」デイジーが言いました。

少しして、洞窟の入り口の巨大な岩が動きました、イッカボッグがカゴをふたつ持って帰ってきました。ひとつはいつものように山盛りのキノコ、そしてもうひとつには、凍ったクルズブルグのチーズが詰まっていました。

みんないつものように黙って食べました。イッカボッグは、カゴを片付けると、火をかきたてて、陽が暮れるころに洞窟の入り口に向かいました、人間にはわからない言葉で、奇妙な歌を歌うためです。

デイジーが立ち上がりました。

「何やってるんだよ?」バートはそうささやくと、デイジーの手を引っ張りました、「座れよ!」

「いやよ、」デイジーは手を払いのけて言いました。「話をしてみたいの。」

そしてデイジーは大胆にも洞窟の入り口まで歩いていくと、イッカボッグのそばに腰を下ろしました。

 

 

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