本文中の挿絵は、子供たちからの応募作品の中から掲載させて頂きました。内容は抜かしているところもたくさんあり、荒っぽい訳なので、本が出版されたら、みなさん、ぜひ本物を楽しんでくださいね。
本の目次と登場人物の紹介は、「JKローリング新作「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲」をご覧ください。
(注)この記事内のカタカナ表記を含む表現文字は「どら雲」独自のもので、正式表記とは異なりますのでご了承ください。
「イッカボッグ」第十七章:グッドフェローが抗議する
ビーミッシュ夫人とバートが立ち去ると、スピトルワースは大急ぎで衛兵隊の部屋へ向かいました。
「みんな疲れています、早く家に帰って休みたいでしょう。」ローチはぶつぶつと言いました。
「少し話をしたら、そうさせてやろう、」スピトルワースは疲れ切った兵士たちを見回しました。
「マーシュランドで起こったことについて、質問のある者はおるか?」
兵士たちは顔を見合わせました。そこに、グッドフェロー大尉と、ふたりの兵士が手を上げました。
「なぜ我々が確認する前に、ビーミッシュの体を、包んでしまったのですか?」グッドフェロー大尉が尋ねました。
「銃弾はどこへ行ったのですか、銃声を聞きましたが。」二人目の兵士が尋ねました。
「そんなに巨大な怪物なら、なぜ四人しか見ていないのですか?」三人目の兵士が尋ねました。
「いい質問だ、」スピトルワースが、落ち着き払って答えました、「説明しよう。」
そして、スピトルワースは、ビーミッシュ夫人に説明した通りの筋書きを、兵士たちにも繰り返しました。
それでも納得しない者がたくさんいました。
グッドフェロー大尉が、また質問しました、「ところで一体、ノビー・ボタンとは、何者ですか?」
「ノビー・ボタンのことをなぜ知っているんだ?」スピトルワースは、うっかり口を滑らせてしまいました。
「召使のへティーに聞いたのです、」グッドフェローは言いました。
「彼女がワインを注いでいるときに、あなたがその話をしているのを聞いたのです。ノビー・ボタンという兵士が、夫人に知らせるために送られたと。
でも、私はノビー・ボタンなどという者は知りません。そのような名前の者には会ったこともありません。おかしいではありませんか?」
スピトルワースは険しい声で話し出しました、
「お前が知らなくとも、他の者は知っているかもしれんぞ、グッドフェロー大尉、中には、ちゃんと覚えている者もいるだろう。その者たちには、ノビー・ボタンの記念として、王から金貨一袋を授けるとしよう。
勇敢なノビー、彼はおそらく、ビーミッシュと同様、怪物に食われてしまったのだろう、その勇気ある忠誠心に対して、彼の戦友には、昇給を与えよう。尊いノビー・ボタン、彼の親友にはみな、昇進の道を約束しよう。」
兵士たちは、理解したのです。
スピトルワースの言う通りに、イッカボッグとノビー・ボタン二等兵が本当にいたのだと話を合わせれば、昇給と昇進が約束されると。
グッドフェローは椅子を蹴って立ち上がりました、「ノビー・ボタンなど存在しない、イッカボッグも存在しない、私はうそつきの仲間にはなりませんぞ!」
他の二人の兵士も、立ち上がりました。
でも、それ以外の者は、みんな、だまって、座ったまま、様子をうかがっていたのです。
「よろしい、」スピトルワースが言いました、
「お前たち三名を裏切り行為で逮捕する。お前たちはイッカボッグが現れたときに、王を守ることも忘れ、しっぽを巻いて、逃げ出した臆病者だ。その罰は、銃殺に値する。」
そして三名の兵士は、大勢の兵士に取り押さえられて、部屋から引きずり出されてしまいました。
スピトルワースは残った兵士たちに、昇給と昇進を約束し、
帰って、家族に、マーシュランドでの出来事を、今聞いたとおりに話して聞かせるようにと命じました。