イッカボッグ・訳 by どら雲

JKローリング「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲:第1章

イッカボグ

JKローリングのイッカボッグ

本文中の挿絵は、子供たちからの応募作品の中から掲載させて頂きました。内容は抜かしているところもたくさんあり、荒っぽい訳なので、本が出版されたら、みなさん、ぜひ本物を楽しんでくださいね。

本の目次と登場人物の紹介は、「JKローリング新作「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲」をご覧ください。

(注)この記事内のカタカナ表記を含む表現文字は「どら雲」独自のもので、正式表記とは異なりますのでご了承ください。

「イッカボッグ」第一章:怖いもの知らずのフレッド王

昔々あるところに、コルヌコピアという小さな国がありました。

Cornucopia

その国は、「怖いもの知らずのフレッド王」が治めている国でした。

フレッド王は、黄色い巻き毛と、立派なヒゲをはやしたハンサムな王様で、いつもニコニコとみんなに手を振っていたので、国民からも人気がありました。

King Fred

コルヌコピアは、とても豊かな国でした。食べ物は豊富で、商人たちの商売もうまくいっていました。国で起こる小さな問題は、王様の家来が解決してくれましたので、王様は、ニコニコしているだけでいいのでした。

王様には、スピトルワース公とフラプーン公というふたりの親友がいました。スピトルワース公とフラプーン公は、コルヌコピアに大きな領地をもつ貴族でしたが、王様のお城に住んで、王様の食べ物を食べて、王様と狩りに出かけたりするほうが、安上りだし楽しいので、いつも王様のそばにいました。

ふたりは、ずっと王様といっしょに遊んでいたかったので、独身の王様が、宮殿の令嬢たちと恋をしたり結婚したりしないように、色々と策略するのでした。

いっとき、フレッドはエスランダ令嬢に思いを寄せていました。フレッドは色白でハンサムでしたが、エスランダ令嬢は濃い色の肌でとても美しい人でした。けれどもスピトルワースが、令嬢は真面目で堅物すぎるので、国民に愛される女王になるにはふさわしくないと王様を説得したのです。フレッドは知りませんでした、スピトルワース公が、以前令嬢に結婚を申し込んで断られ、ずっと恨みに思っていたことを。

エスランダ令嬢

スピトルワース公はやせっぽちで賢くてずるい人でした。フラプーン公は、赤ら顔の大男で、スピトルワース公ほど賢くはありませんが、王様よりは、ずっと頭のいい人でした。ふたりともお世辞がうまくて、いつも王様を上手に褒めたり、ご機嫌を取ったり、王様がふたりのことを、いちばん信頼のできる親友だと思い込ませるのが上手でした。

ふたりは、いつも王様に豪華なパーティーやピクニック、晩餐会を催すように仕向けました。

コルヌコピアは、おいしい食べ物で有名な国だったからです。

Party

コルヌコピアの首都は、南のほうにあるショーヴィルという街でした。ショーヴィルでは、おいしい果物、小麦やミルクがふんだんに取れて、一流の菓子職人が、最高の焼き菓子を作っていました。

コルヌコピアの隣にある、プルリタニアという国のポルフィリオ王は、コルヌコピアの名物「天国の願い」という焼き菓子を一生分くれるなら、娘のひとりを、フレッド王の嫁にしてもいいと申し出たくらいです。

Princesses

ショーヴィルの北側には、クルズブルグとバロンスタウンという街がありました。そこには、緑の牧草地と光り輝く川が流れていて、真っ黒な牛と、ピンクの豚がのんびりと草を食べていました。

ふたつの街は、コルヌコピアの真ん中を流れるフルーマという川にかかっている大きな石橋で別れていて、明るい色の船が、ふたつの街を行き来して、荷物を運んでいました。

クルズブルグはチーズの名産地、バロンスタウンは、ハムやベーコンなどの名産地でした。

クルズブルグとバロンスタウンを、さらに北に何時間か行くと、ブドウ畑が広がるジェロボームという街に出ます。ジェロボームは、街を歩いているだけで、ほろ酔い気分になるほどのワインの名産地でした。

ところが、

ジェロボームをさらに北に行くと、おかしなことが起こりました。コルヌコピアの北のてっぺんは、マーシュランドと呼ばれる場所で、そこはコルヌコピアとは思えないような、さびれた土地だったのです。みすぼらしい羊たちが、味のしない、ぐにょぐにょなキノコと、乾燥した草をほおばっていました。マーシュランドに住む人々は貧しくて、コルヌコピアの名産品を口にしたこともありません。食べるものといえば、売れ残った年寄り羊からできた油っぽいマトンスープでした。

コルヌコピアの人たちはみんな、マーシュランドの人たちを嫌っていて、物まねしたりからかったりして、喜んでいました。

けれど、ただひとつ、

コルヌコピアの人たちが気にしていたのは、マーシュランドに住むという、イッカボッグの伝説だったのです。

コルヌコピアの国

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