本文中の挿絵は、子供たちからの応募作品の中から掲載させて頂きました。内容は抜かしているところもたくさんあり、荒っぽい訳なので、本が出版されたら、みなさん、ぜひ本物を楽しんでくださいね。
本の目次と登場人物の紹介は、「JKローリング新作「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲」をご覧ください。
(注)この記事内のカタカナ表記を含む表現文字は「どら雲」独自のもので、正式表記とは異なりますのでご了承ください。
「イッカボッグ」第三十六章:飢えるコルヌコピア
一年が過ぎました...そして二年...そして三年、四年、五年。
小さな王国コルヌコピア、隣国がうらやむ豊かな土地、腕のいいチーズ職人、ワイン醸造者、菓子職人、そして幸せな人々が暮らすその国は、以前の姿からは見る影もなく変わり果てていました。
ショーヴィルの街は、何とか持ちこたえていました。王様に気づかれないようにと、スピトルワースがたくさんのお金を使って今まで通りの生活を保っていたのです、特に「街中の街」はそうでした。
けれども、北へ行くと、人々は苦しんでいました。商店や居酒屋、鍛冶屋、修理屋、農家、ワイン工場が、どんどん店じまいをしていました。イッカボッグ税が人々を貧困に追いやっていたのです。
悪いことはそれだけではありませんでした。人々は、次は自分たちが襲われるかもしれないと恐れていました。扉をぶち壊して家や牧場の回りにたくさんの足跡を残していくイッカボッグ、か、何かに。
本当にイッカボッグが犯人なのかどうかと疑う者は、大抵、次に「闇の使い」の犠牲者となりました。「闇の使い」というのは、スピトルワースとローチがつけた名前で、不信者を夜中に襲って殺したあと、家のまわりに足跡を残していく部隊のことです。
たまに、街の中に不信者が見つかった時は、誰にも見られずにお芝居をすることができません。その場合、スピトルワースは裁判を開き、グッドフェローたちの時と同じように、家族を殺すと脅して、裏切り行為を自白させたのです。
裁判の数が増えると、牢獄の数も増えました。そして孤児院も必要になりました。なぜ孤児院が必要かって?
それは、まず第一に、たくさんの親たちが殺されたり、牢獄に入れられたりするからです。そして、人々は貧しくて家族を養うだけでも大変なので、誰も、孤児を引きとることができなくなってきたからです。
第二に、貧しい人々は飢えていました。親たちはいつも自分が食べる前に、子供達に食べさせます。そして最後に生き残っているのは、子供達なのです。
そして第三に、家を失って絶望的な家族は、せめて子供達だけでも寝る場所と食べ物にありつくようにと、孤児院に預けるのです。
宮殿で皿洗いをしていたヘティーを覚えていますか? グッドフェロー大尉たちが死刑になりそうだと、エスランダ令嬢にこっそり知らせた勇気ある女性です。
ヘティーはあのあと、エスランダ令嬢からもらった金貨で、お父さんのぶどう園があるジェロボームへ逃げたのです。一年後、ホプキンズという男性と結婚して、双子の男の子と女の子を産みました。
けれども、ホプキンズ一家は、イッカボッグ税を払えなくなって、小さな食料品店を失ってしまいました。ヘティーの両親は、ぶどう園を失って、そのあと飢え死にしてしまいました。誰も助けてくれません。家もなくなって、おなかをすかせて泣く子供たちを連れて、切羽詰まったヘティーとご主人は、グランターばあさんの孤児院に向かいました。
すすり泣く双子は、お母さんの腕から引き離されました。扉が閉まり、鍵がかかりました。気の毒なヘティー・ホプキンズとご主人は、子供たちと同じくらい泣きじゃくっていました。そしてグランターばあさんが、子供達の面倒をちゃんと見てくれるようにと祈るのでした。