イッカボッグ・訳 by どら雲

JKローリング「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲:第4章

イッカボグ

JKローリングのイッカボッグ

本文中の挿絵は、子供たちからの応募作品の中から掲載させて頂きました。内容は抜かしているところもたくさんあり、荒っぽい訳なので、本が出版されたら、みなさん、ぜひ本物を楽しんでくださいね。

本の目次と登場人物の紹介は、「JKローリング新作「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲」をご覧ください。

(注)この記事内のカタカナ表記を含む表現文字は「どら雲」独自のもので、正式表記とは異なりますのでご了承ください。

「イッカボッグ」第四章:静かな家

ダブテイル夫人の遺体は、「街中の街」にある墓地に埋められました。

王室の使用人は、代々そこに永眠しているのです。

デイジーとおとうさんは、手を取り合って、ずっとお墓を見つめていました。

バートは、ずっとデイジーのことを見つめていました。

バートは、親友に言葉をかけてあげたかったけれども、その出来事があまりにも大きくて、恐ろしいことだったので、言葉が浮かびませんでした。

自分のおかあさんが、土に埋められて消えてしまうなんて、もう二度と会えなくなるなんて、考えるのも耐えられなかったのです。

お葬式に来てくれた人たちがみんな帰ったあと、ダブテイルのおじさんは、王様が贈ったパープルの花輪をダブテイル夫人のお墓からはずして、その日の朝にデイジーが集めてきたスノードロップの小さな花束を、そっと置きました。

それからふたりは、ゆっくりと家に向かって歩き出しました。

 

お葬式から一週間過ぎた頃、

王様は、衛兵隊を連れて、宮殿の外に狩りに出かけました。

いつものように、王様が通ると街の人々は、みな手を止め、道路わきに走り出てきて、

お辞儀をしたり、あいさつをしたりしました。

 

人々に手を振りながら、王様は、誰も出てこない一件の家に気が付きました。

 

「あの家には誰が住んでいるのだ?」王はビーミッシュ少佐に尋ねました。

「陛下、あれ・・あれは、ダブテイルの家です。」ビーミッシュは答えました。

「ダブテイル・・ダブテイル・・どこかで聞いた名前だな」と王は考え込んで言いました。

「あ、それは陛下・・ダブテイルは陛下のおかかえ大工で、ダブテイル夫人は、あの、陛下の主任裁縫師です。」とビーミッシュ少佐は答えました。

 

「ああ、そうだった、」フレッド王はあわてて言いました。

「覚えておる・・。」

そう言うと、王様は、白馬を駆け足に走らせ、窓に黒いカーテンのかかったダブテイルの家をさっさと通り過ぎたのでした。

静かな家

それからというもの、誰も出てこない、扉に黒いカーテンのかかったダブテイルの家の前を通るたびに、王様は、アメジストのボタンを握りしめて死んでいる裁縫師のことを思い浮かべてしまうのでした。

 

たまらなくなった王様は、主任相談役を呼びつけてこう言いました。

「ヘリングボーン、公園に行く途中の角に、家がある、いい家だ、大きな庭のある・・」

「陛下、それはダブテイル家の家のことでしょうか?」

「おお、あの家がそうであったか」フレッド王は、何気なく答えた。

「小さな家族には大きすぎる家ではないか?確か住んでいるのは二人だけだと聞いたが」

「さようでございます、陛下。ふたりだけです、母親は・・」

 

フレッド王は大声で言いました、

「あのような大きな家に二人しか住んでいないというのは、不公平ではないか、5人や6人の家族でもっと広い家がほしいと思っている者がいるだろう。」

「陛下、ダブテイルに引っ越しを命じましょうか?」

「そうするがいい。」フレッド王は言いました。

「かしこまりました、陛下。」主任相談役は深くお辞儀をして言いました。

「ローチ家と交換するように言いましょう。大きい家が必要でしょうから。ダブテイル家には、ローチ家の家に引っ越してもらいましょう。」

「ローチ家の家はどのあたりなのだ?」もっと近くになっては大変だと思った王様は、いら立って尋ねました。

「街のはずれです。墓場に近い、あの・・」

「それはちょうどよい」王様がすかさず言いました。

「細かいことはよい、ヘリングボーン、お前にすべて任せる。」

 

デイジーとおとうさんは、王室衛兵隊のローチ大尉一家と、住家を交換するように命じられました。

次にフレッド王が街に繰り出したときには、ドアにかかっていた黒いカーテンは消えていて、そこからは、ローチ家の4人のやんちゃな兄弟が、コルヌコピアの旗を振りながら飛び出してきて、大歓声を上げていたのでした。

フレッド王は晴れ晴れとした笑みを浮かべ、男の子たちに手を振っていました。

何週間か過ぎると、フレッド王は、ダブテイル家のことなどすっかり忘れて、以前の幸せな王様となっていたのでした。

 

 

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