イッカボッグ・訳 by どら雲

JKローリング「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲:第35章

イッカボグ

 

本文中の挿絵は、子供たちからの応募作品の中から掲載させて頂きました。内容は抜かしているところもたくさんあり、荒っぽい訳なので、本が出版されたら、みなさん、ぜひ本物を楽しんでくださいね。

本の目次と登場人物の紹介は、「JKローリング新作「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲」をご覧ください。

(注)この記事内のカタカナ表記を含む表現文字は「どら雲」独自のもので、正式表記とは異なりますのでご了承ください。

「イッカボッグ」第三十五章:スピトルワース公のプロポーズ

それから数日後、エスランダ令嬢はひとりで宮殿のバラ園を歩いていました。茂みに隠れていた二人の兵士は、今だとばかりに、令嬢をつかまえ、猿ぐつわをかませ、両手を縛って、郊外のスピトルワースの屋敷まで連れ去りました。そしてスピトルワースに知らせを送り、そこで待ちました。

スピトルワースは、すぐにエスランダ令嬢の召使いのミリセントを呼びつけて脅しました、エスランダ令嬢の友達に、令嬢が修道女になることにされたと伝えろ、さもないと、妹を殺すと。

エスランダ令嬢の友達はその知らせを聞いて、みんな驚きました。修道女になりたいなんて、それまで一度も聞いたことがなかったからです。何人かは、スピトルワース公のたくらみで、令嬢が消えたのではないかと怪しみました。

けれども悲しいことに、みんなスピトルワースのことをとても恐れていたので、お互いにささやきあうことはあっても、エスランダ令嬢を探したり、スピトルワースに詳しいことを聞いたりする人はいませんでした。もっとひどいことに、「街中の街」から逃げ出そうとして兵士につかまり、牢獄に入れられてしまったミリセントのことを、誰も助けようとはしなかったのです。

次に、スピトルワースは、郊外の屋敷に向かいました。翌日の夜遅くです。二人の兵士に50金貨ずつ渡すと、しゃべったら死刑だと脅しました。

スピトルワースは、鏡をのぞいて、薄いヒゲを整えると、エスランダ令嬢を探しにいきました。令嬢は、書斎で、ロウソクをともし、本を読んでいました。

「こんばんは、令嬢、」お辞儀をしてスピトルワースが言いました。

エスランダ令嬢は、黙って顔を上げました。

「いい知らせがあります、」スピトルワースは笑いながら続けました、

「あなたは、主任相談役の妻となるのです。」

「その前に死にますわ、」エスランダ令嬢は愛想よく言うと、ページをめくり、また読み始めました。

「そんなことをおっしゃらずに、」スピトルワースが言いました、「ご覧のとおり、この屋敷は、ご婦人の繊細な手入れが必要なのです。あんな飢え死にしかけたチーズ職人の息子に恋するよりも、ここにいるほうが、ずっと幸せになれますよ。」

エスランダ令嬢は、スピトルワースがグッドフェロー大尉のことを持ち出してくるに違いないと思って、この冷たくて汚い屋敷に着いてからずっと、どう答えるか準備していました。

そして、顔色も変えず、涙も浮かべずに、答えました、「スピトルワース公爵、私は、グッドフェロー大尉のことなど、とっくの昔に忘れています。裏切りを告白する姿を見て大嫌いになりました。私は信頼できない人を愛することはできないのです。ですからあなたのことも、決して愛することはできません。」

令嬢が、もっともらしく言ったので、スピトルワースは、その言葉を信じました。

そして違う手を考えました。

まず、結婚しなかったら両親を殺すと脅しました。

エスランダ令嬢は、自分がグッドフェロー大尉と同じく、すでに親をなくしていると答えました。

すると今度は、母親が残した宝石を全部取り上げると脅しました。

令嬢は肩をすくめると、自分は本のほうが好きだからと答えました。

とうとうスピトルワースは、、令嬢を殺すと脅しました。

すると令嬢は、どうぞご自由に、あなたの話を聞かされるよりずっとましですわ、と答えました。

スピトルワースは、ひどく怒りました。今まで何でも自分の欲しいものは手にいれてきたのです。それが今、思い通りにならないとわかると、尚さら、欲しくなりました。

そしてこう言ったのです、

それほど本が好きなら、一生この書斎に閉じ込めておこう、窓には鉄格子を入れて、執事のスクランブルに3度の食事を運ばせよう、部屋を出るのは、お手洗いに行く時だけだ。結婚すると言わない限り。

「ならば私はこの部屋で死にましょう、」物静かにエスランダ令嬢が言いました、「あるいは、お手洗い、かもしれませんわね。」

それ以上何も言わない令嬢に激怒して、主任相談役は部屋を出て行きました。

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