本文中の挿絵は、子供たちからの応募作品の中から掲載させて頂きました。内容は抜かしているところもたくさんあり、荒っぽい訳なので、本が出版されたら、みなさん、ぜひ本物を楽しんでくださいね。
本の目次と登場人物の紹介は、「JKローリング新作「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲」をご覧ください。
(注)この記事内のカタカナ表記を含む表現文字は「どら雲」独自のもので、正式表記とは異なりますのでご了承ください。
「イッカボッグ」第三十二章:作戦の見落とし
翌朝、テンダーロイン夫妻の近所の人たちは、走り回っているニワトリをみつけました。
そして、ニワトリが小屋から逃げていることを知らせようとタビーの家に駆けつけました。みんなの驚きようったらありません。巨大な足跡、あちこちについた血と羽根、壊れた裏口、そして夫婦の姿がどこにも見えないのです。
一時間もしないうちに、タビーのからっぽの家の周りには大勢の人が集まってきて、巨大な足跡や、破られた扉や壊された家具を調べていました。パニックです。
あっという間に、イッカボッグがバロンスタウンの肉屋の家を襲ったという知らせが、北へ南へ東へ西へと、広がりました。
連絡係が町の広場で鐘を鳴らしました。
二日過ぎたころ、イッカボッグが夜中に村を襲って二人さらっていったという事件を知らないのは、国中で、マーシュランダーだけになっていました。
バロンスタウンにいたスピトルワースのスパイは、一日中、群衆に混ざって、みんなの反応を見ていました。そして、作戦は大成功だったとご主人様に連絡を入れました。
ところが、陽が暮れるころ、そろそろ家に帰って、ソーセージとビールでお祝いをしようと考えていたスパイは、数人の男が、イッカボッグの巨大な足跡を見ながら、何やらささやいているのを見かけました。近づいていって、スパイは言いました、
「恐ろしい話だ。見てみろよ、その足の大きさ!爪の長さ!」
タビーの隣人のひとりが、しかめっ面をして言いました、
「飛んでるんだ。」
「え?何だって?」スパイは聞き返しました。
「ぴょんぴょん飛んでるんだよ、」その男はまた言いました、
「見てみろよ、同じ左足ばかり、何度も何度も。あれは、イッカボッグがぴょんぴょん飛んでいるのか、そうでなきゃ・・・」
そう言いかけて、男は口を閉じました。その顔を見たスパイは、不安になりました。
そして、家に帰るのをやめて、スパイは馬に乗ると、いちもくさんに宮殿へ向かったのです。