本文中の挿絵は、子供たちからの応募作品の中から掲載させて頂きました。内容は抜かしているところもたくさんあり、荒っぽい訳なので、本が出版されたら、みなさん、ぜひ本物を楽しんでくださいね。
本の目次と登場人物の紹介は、「JKローリング新作「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲」をご覧ください。
(注)この記事内のカタカナ表記を含む表現文字は「どら雲」独自のもので、正式表記とは異なりますのでご了承ください。
「イッカボッグ」第三十章:怪物の足
一ヵ月が過ぎました。
地下深い牢獄で、ダブテイルさんは、死にもの狂いで作業をしていました。
一刻も早く「怪物の足」を仕上げて、デイジーに会いたかったからです。
この仕事が終わったらここから出してやるとスピトルワースは言いました。ダブテイルさんは、その言葉を信じたかったのですが、そんなことはあり得ない、ぜったい出してなどくれるものか、という声が、いつも頭の中で響いていました。
恐怖を振り払うように、ダブテイルさんは、何度も何度も国家を歌うようになっていました:
コ~~ルヌコピア、王を讃えよ、
コ~~ルヌコピア、声高らかに歌え・・・
その歌声は、作業をするノミやハンマーの音よりも、回りの囚人をいら立たせていました。
今では痩せこけてみすぼらしい姿となったグッドフェロー大尉も、やめてくれと頼んだのですが、ダブテイルさんは、気にもとめませんでした。
ダブテイルさんは、無我夢中でした。国家を歌い続ければ、愛国心が強くて、危険人物ではないのだとスピトルワースが思ってくれるかもしれない、そして釈放してくれるかもしれない、そんなことを考えていました。
そういうわけで、牢獄はいつも、作業する道具の音と、国家が鳴り響いていたのです。そして少しずつ、鋭い爪の怪物の足は、出来上がっていきました。馬の上から足跡をつけられるように、長い取っ手もついていました。
そしてついに木製の足型が出来上がると、スピトルワース、フラプーン、そしてローチ少佐が、確認のために牢獄に降りてきました。
「うむ、」足型をくまなく確認すると、スピトルワースがゆっくりと言いました、「よくできておるな、どうだ、ローチ?」
「さようでございますな、公爵」少佐が答えました。
「ダブテイル、いい出来だ、」スピトルワースが大工に向かって言いました、「今夜は、たっぷりと食わせてやるようにと、係の者に言っておこう。」
「仕事が終われば帰してくれると言ったではないですか?」疲れ切って青ざめたダブテイルさんは、がくりと膝をついてそう言いました、
「お願いです、公爵、どうかお願いです、娘のところに帰らなければ・・・どうかお願いです。」
ダブテイルさんは、スピトルワース公の手にすがりました。
スピトルワースは、その手を振り払って言いました、
「触るな、裏切り者。生かしてもらってるだけでもありがたいと思え。もしこの作戦がうまくいかなければ、それとて保障はできんがな。まあ、うまくいくように、祈っておくことだな。」