イッカボッグ・訳 by どら雲

JKローリング「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲:第13章

イッカボグ

JKローリングのイッカボッグ

本文中の挿絵は、子供たちからの応募作品の中から掲載させて頂きました。内容は抜かしているところもたくさんあり、荒っぽい訳なので、本が出版されたら、みなさん、ぜひ本物を楽しんでくださいね。

本の目次と登場人物の紹介は、「JKローリング新作「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲」をご覧ください。

(注)この記事内のカタカナ表記を含む表現文字は「どら雲」独自のもので、正式表記とは異なりますのでご了承ください。

「イッカボッグ」第十三章:事故

スピトルワース公とフラプーン公は、王様とローチ大尉を残して、霧の中を沼地へと向かいました。

ふたりの足は、みるみる沼に沈んでいきました。

あたりは、まだ濃い霧が立ち込めていました。

突然、象のような大きな岩が現れたり、草がこすれ合ってがらがらヘビのしっぽのような音を立てたり、

ふたりは、イッカボッグなどいないとわかっていても、だんだんと怖くなってくるのでした。

フラプーン公は、いつでも撃てるように、腰からラッパ銃をはずして、握りしめていました。

 

「聞こえたか?」スピトルワース公がささやきました。暗闇から変な音が近づいてきたのです。

低いうめき声と、引きちぎるような音、まるで怪物が、衛兵隊の体を食いあさっているような音でした。

「そこにいるのは誰だ?」スピトルワース公が、かん高い声で叫びました。

すると、少し離れたところから、ビーミッシュ少佐が、叫びました、

「そこにいるのはスピトルワース公ですか?」

「そうだ、ビーミッシュ、何やら不気味な物音がする、お前には聞こえるか?」

 

変なうめき声と引きちぎるような音は、どんどん大きくなってきました。

その時、霧が晴れました。

そして、ふたりの目の前に、ギラギラ光る白い目と、大きな黒いシルエットが現れ、長いうなり声を上げたのです。

耳をつんざくような爆音が、沼地を震わせました。

フラプーン公が、ラッパ銃をぶっぱなしたのです。

あちこちで衛兵だちが大騒ぎを始めました。

そして、銃声におびえたかのように、濃い霧がさっと消えていったのです。

目の前に現れたのは、

月の光に照らされた、巨大な岩と、角のような木の枝のかたまり、

そして、枝に絡まって、鳴きながら逃げ出そうとしていた、やせ細った哀れな老犬でした。

 

そして、その巨大な岩のむこうに、うつ伏せに倒れていたのは、

ビーミッシュ少佐だったのです。

 

「誰が銃をうったのだ?」霧の中で、衛兵たちは口々に叫びました。

スピトルワース公とフラプーン公は、黙ったままでした。

スピトルワース公が近づいて確かめると、ビーミッシュ少佐は心臓を撃ちぬかれて、すでに死んでいました。

「大変なことになった、どうすればいいのだ?」フラプーン公はおびえていました。

スピトルワース公はこれまでにないほど一生懸命に考えを巡らせました。

 

フラプーン公とラッパ銃、羊飼いの老犬、すぐそばに見つけたのは、沼に半分埋まった王様のブーツと剣。

スピトルワース公は、剣で枝に絡まった犬を助けだして逃がしてやると、フラプーン公に言いました、

「よく聞くんだ、」

その時、霧の中から、でっかいローチ大尉が現れました、

「王から様子を見てこいと命じられた、いったい何事・・?」

 

ローチ大尉は、ビーミッシュ少佐が死んでいるのを見てしまいました。

とっさにスピトルワース公は、ローチ大尉を巻き込んで、計画を企てたのです。

「ビーミッシュ少佐はイッカボッグに殺されてしまった。ということは次の少佐は、ローチ大尉、君ということになる。君の給料を上げてもらうように私が提案しよう、何せ君は、勇敢に、よ~く聞けよ、君は勇敢にイッカボッグと戦い、追っ払ったんだからな。

いいか、フラプーンと私がここに来たときには、イッカボッグがビーミッシュ少佐に食いついていた。フラプーン公が脅すためにラッパ銃を空に向かって撃ったので、怪物は、ビーミッシュを置いて逃げてしまった。君は、その時、怪物の体に突き刺さっていた王様の剣を取り戻そうと追いかけたが、間に合わなかった。王様には気の毒だが、おじい様から譲り受けた宝石の埋め込まれた貴重な剣は、永遠にイッカボッグの巣の中だ。」

そう言うと、スピトルワース公は、ローチ大尉の大きな手にその剣を押し付けました。

王様の剣2

少佐に格上げされたローチは、宝石の埋まった剣をみながら、冷酷で狡猾な笑みを浮かべたのでした。

「その通りです、剣を取り返せなくて、非常に残念です、」ローチは言いました、

「怪物の牙のあとがあるむごい死体をみんなの目にさらすのは気の毒です。少佐の体を包んであげましょう。」

 

「ローチ少佐、あなたは気が利く人だ。」スピトルワース公がそう言うと、ふたりは自分たちのマントをはずし、ビーミッシュ少佐の死体を包みました。

その様子を見ながら、フラプーン公は、自分が誤ってビーミッシュ少佐を殺してしまったことがばれないことに、一安心していたのでした。

ローチが言いました、

「ところでスピトルワース公、イッカボッグはどんな姿をしていたのでしたっけ?私達3人がいっしょに見たのです、説明も同じはずです。」

「そうだな、」スピトルワース公が答えました、

「王によれば、それは、背が馬の2頭分もあって、大きなランプのように光った目だったようだ。」

そこにフラプーン公が口をはさみました、「というより、そこにある巨大な岩と、その下に犬の目が光っているような感じに見えたぞ。」

ローチは繰り返しました、

「背が馬の2頭分もあって、大きなランプのように光った目、ですね、わかりました。それでは、ビーミッシュの死体を運びます、どのように死んだか、皆で王様に説明しましょう。」

イッカボッグ2

 

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