イッカボッグ・訳 by どら雲

JKローリング「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲:第10章

イッカボグ

JKローリングのイッカボッグ

本文中の挿絵は、子供たちからの応募作品の中から掲載させて頂きました。内容は抜かしているところもたくさんあり、荒っぽい訳なので、本が出版されたら、みなさん、ぜひ本物を楽しんでくださいね。

本の目次と登場人物の紹介は、「JKローリング新作「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲」をご覧ください。

(注)この記事内のカタカナ表記を含む表現文字は「どら雲」独自のもので、正式表記とは異なりますのでご了承ください。

「イッカボッグ」第十章:フレッド王の冒険

フレッド王は、意気揚々と謁見室をあとにしました。

これで二度と誰も、王様のことを、身勝手で、見栄っ張りで、ひどい王様とは言わないだろう。

くさくて粗野な羊飼いと、役立たずの老犬のために、恐れ知らずのフレッド王が、イッカボッグ退治に出発するのです。

イッカボッグなんているわけはありません、でも、それをその目で確かめるために、国の北のてっぺんまで出向くのは、王様として気高く、立派なことだったのです。

王様は、昼食も取らずに、出発の準備に取り掛かりました。

 

初めて身に着けた立派な軍服姿に、フレッド王は、満足でした。

白馬にまたがり、大蛇のような怪物を槍でしとめる恐れ知らずのフレッド王。

そんな自分の雄姿を想像しながら、王様は、イッカボッグが本当にいればいいのにと、

思ってしまうのでした。

 

主任相談役のヘリングボーンは、王様が、国中を回る旅に出発することを発表し、「街中の街」に住む人全員に、盛大な見送りの準備をするようにと命じました。

でも、王様が、イッカボッグ退治に出かけるということは秘密にしていました。

 

それでも、噂は、あっという間に街中に広がってしまいました。

「冗談だろ?」見送りに出てきた街の人たちは口々に言いました。

お遊び気分なんだろうという人もいましたし、

他に何か重大な理由があるにちがいないという人もいました。

 

王様のお気に入りのエスランダ令嬢は、他の令嬢たちといっしょに、バルコニーに出て、兵士たちが準備しているところを眺めていました。

見送る令嬢たち

ここで、あなただけに誰も知らない秘密をおしえましょう。

 

実は、もしフレッド王が、エスランダ令嬢に結婚を申し込んだとしても、エスランダ令嬢は、プロポーズを受けることはなかったのです。

なぜなら、エスランダ令嬢は、グッドフェロー大尉に、ひそかに恋をしていたからです。

グッドフェロー大尉は、中庭で、仲良しのビーミッシュ少佐と楽しそうにおしゃべりをして笑っていました。

エスランダ令嬢は恥ずかしがり屋で、グッドフェロー大尉に話しかけることもできなかったので、グッドフェロー大尉は、そんなエスランダ令嬢の気持ちなど、まったく知りませんでした。

グッドフェロー大尉の両親は、生前、クルズブルグのチーズ職人でした。

グッドフェロー大尉は、勇敢で頭のいい人でしたが、その時代、チーズ職人の息子が、宮廷で一番の美女と結婚するなど考えられないことだったのです。

 

さて、フレッド王が率いる戦士たちの行列は、街中のひとたちの歓声を浴びて、出発しました。

バートもビーミッシュ夫人も、勇ましいビーミッシュ少佐の軍服姿を誇らしく思いながら見送りました。

デイジーとお父さんも、前庭に出てきていましたが、王様の軍団が通り過ぎるのをはるか遠くに見ていただけでした。

「おとうさん、イッカボッグなんて、ほんとはいないんでしょ?」デイジーは尋ねました。

「いないよ」そういってため息をつくと、おとうさんは、仕事場に戻っていきました、

「イッカボッグなんていない、でも王様がいるというなら、そう言わせておけばいいよ、どちらにしても、マーシュランドでは、大したことは起こらないだろうからね。」

どれほど思慮深い人でも、迫りくるとんでもない危険に気づくことはできないということなのでした。

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