新入社員の頃です。
卒業して最初に就職した会社は日系で、日本人とアメリカ人、日本語と英語、バランスよく混ざっていて、社風もメローで溶け込みやすかったのですが、その次に転職した会社は、100%英語で、どちらかというと流行りのブランド会社という感じだったので、社員もみんな自由で奇抜なファッションだし、学生時代にはさぞ目立っていただろうと思われるタイプの人が多い職場でした。
会話好きなアメリカ人たち
仕事の内容はそれまでも主に英語だったので、慣れてはいたのですが、何よりびっくりしたのが、同僚たちのおしゃべり。
ランチタイムともなると、数人が集まって、週末は何をしたの、新作映画がどうの、この俳優がどうの、あのブランドが、そっちのレストランが、あっちのお店が、うちの子が・・・。
とにかくすごい勢いで飛び交う話題と会話のスピードに、開いた口がふさがらないというのは、まさにこのこと、入社後しばらくは口を開けたままという状態でした。
仕事中は真面目にちゃんと働いているのですが、とにかく自由時間が奔放すぎる。
私は話の輪に入って、相槌をうち、何かひとことコメントを・・と試みるのですが、私の声など、みんなのおしゃべりにかき消され、話題はどんどん次へと流れ・・・。
「アメリカ人は」という大雑把な言い方は好きではないし、そんな大きなくくりで話せるほど実体験がないのですが、
アメリカ人はおしゃべりが大好き!
というのが、私の変わらぬ印象です。ただ、この時の同僚たちは、相当なものでした。マシンガンチャットという言葉があってもいいと思えるほどの激しさだったんです。
日本とアメリカのカルチャーの違いはグローバル化した今もかなり根強い
日本の文化・伝統・しきたりは、アメリカ人から見るととても不可解なものが多いようです。たとえば、
能ある鷹は爪を隠す ⇒ ありえない?
できることは、どんどんアピールしよう、自分が宣伝しないで誰がしてくれるのか。黙っていてもわからない、誰も察してはくれませんよ。
そんなことを以前から言われてはいましたが、そうか、そういうことだなと身をもって知ったのはこの頃でした。
私が経験した日本では、クラスに物静かな人がいたら何となく気になって声をかけたり、おしゃべりの輪で静かな子がいたら、わざと話題をふってみたり、なんとなく周りにも目を配って過ごしていたように思うのですが、
その会社の同僚たちは、とにかく言いたいことは言うし聞いてもらいたい、ディスカッションをしたい、そういう人たちだったので、何も言わない人にかまっている余裕はない、そもそも黙っている人は言うことがないか、黙っていたいから黙っているのだ、そういう認識だと思えました。
どこかで割り込むぞ、話題を変えてやる、意見をぶつけてやる、そう考え試行錯誤の後に、ついにつかんだ必勝法は、実はとてもシンプルなものでした。
どうすればみんながあなたの話を聞くのか・Attention please!
とりあえず覚えておきたいのは、「沈黙は美徳ではない」ということ。
私は今でもおしゃべりは苦手で、押しが強い性格にはなれないのですが、もしあなたが、この同僚たちのような輪の中で、何かを言いたいのなら、まず最初にすることは、
大きな声で話すこと
です。
少なくともみんなと同じ音量まではボリュームアップしましょう。おそらく、ほとんどの日本人は、特に慣れない英語環境の中で、そこまで大きな声で話す習慣がありません。かなり意識して声を出さないといけないと思います。
でも、音量を上げるだけで、まずは聞いてもらえます。聞こえるからです。彼らは意識してあなたを無視しているわけではないのです。同じ音量の会話だけをキャッチしていると思えばいいのです。
最初は相槌だけで十分です。言いやすい例は、
- Really?・ほんと?
- Amazing!・びっくりだね
- What happened next?・それでどうしたの?
- I wanna know more!・もっと知りたい!
- Tell me more!・もっと聞かせて!
音声つけますね。練習してみてください。
こういう相槌を、できるだけ大きな声ではっきりと発声していきましょう。話している人をまっすぐに見て、ぶつけるのです。大抵の場合、話している人は気づいてくれます。悪い気はしないでしょう。
相手の注意を一度でも引いたら、あとはどんどん押しまくり、相槌なら相槌だけでもいいので、何度でもアピールしましょう。
そのうちに、もっと話したい、もっと聞いてみたい、そう思える相手がみつかります。そうしたら、個人的に話しかけていきましょう。少人数なら、大声を出さなくても会話ができます。
もしそんな努力をしているあなたのことをあえて無視するような人なら、それ以上関わる必要はありません。きっとどちらにしても聞く耳を持たない人だと割り切って、次にすすみましょう。
英語がそれほど話せなくても、会話そのものが苦手でも、話したいという気持ちがあるのなら、必ず、あなたのことをもっと知りたいと思う人が現れます。決してあきらめず、ここでも継続することが大切です。
能ある鷹は爪を隠す
最後にもうひとつ。
よく耳にするこの諺は、いろんな意味で素晴らしいと思います。ですが、この諺には、「隠していた爪を現わす機会が訪れる」というのが前提だと思います。もし、ずっと使うこともないままに終わってはせっかくの能力がもったいないことになります。
特に欧米諸国においては、全般に、そこまで隠さないほうがいいというのが私の見解です。自慢しすぎたり誇張するのはおすすめできませんが、うまく自分をアピールすることは、とても大切な能力だと思います。