イッカボッグ・訳 by どら雲

JKローリング「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲:第21章

イッカボグ

JKローリングのイッカボッグ

本文中の挿絵は、子供たちからの応募作品の中から掲載させて頂きました。内容は抜かしているところもたくさんあり、荒っぽい訳なので、本が出版されたら、みなさん、ぜひ本物を楽しんでくださいね。

本の目次と登場人物の紹介は、「JKローリング新作「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲」をご覧ください。

(注)この記事内のカタカナ表記を含む表現文字は「どら雲」独自のもので、正式表記とは異なりますのでご了承ください。

「イッカボッグ」第二十一章:フラウディシャム教授

お葬式の翌日、

スピトルワースが、王様の居間に、たくさんの巻き物を持ってやってきました。

王様は、ケーキの味が落ちたと嘆いていました。ビーミッシュ夫人が休みをとっていて、作ったのは弟子のシェフだったのです。

王様は聞きました、「なんだ、その巻き物は?」

スピトルワースが説明しました、

「イッカボッグから国を守るための作戦です。

まず最初に必要なのは、できるだけイッカボッグのことを調査することです。」

 

王様は言いました、「それはそうだが、怪物は謎なんだぞ、みんな今までずっとおとぎ話だと思っていたのだぞ!」

 

そこでスピトルワースが言いました、「実はそれが間違いだったのです。あちこち探しまわって、ようやく見つけたのです、コルヌコピアで一番のイッカボッグの権威とされる者を。今、フラプーンと外に待たせてあります。陛下のお許しが出るのなら・・」

「もちろんだ、今すぐに通しなさい!」フレッドは興奮して言いました。

それは、フラウディシャム教授という、真っ白な髪に分厚い眼鏡をかけた小さな老人でした。

イッカボッグの専門家で、知らないことはないという男でした。

教授

王様は、そんな専門家がいるなら、なぜ今まで聞いたこともなかったのかと、怪しんだのですが、

教授は、すでに引退していて、人々がイッカボッグのことを信じないので、あまり話すこともなくなったのだと説明しました。王様はもちろん納得したのです。

実は、この教授という男の正体は、スピトルワースの執事、オットー・スクランブルだったのです。そしてなんと、昨日のお葬式で、ボタン未亡人を演じていたのも、この同じ男だったのです。

オットーは、スピトルワースが、宮殿に暮らしている間、スピトルワースの屋敷を管理していたのでした。そして、スピトルワース同様、金に目のない男でした。

イッカボッグのことを、あれこれと、もっともらしく解説したあとで、フラウディシャム教授は言いました、

「イッカボッグは記憶力がとてもいいのです。一度逃がした獲物のことは決して忘れません。おそらく陛下のことも・・、そして夜の暗闇を沼地からこっそりと抜け出し、眠っている獲物をとらえるのです。」

フレッドはうなった、「どうするのだ?私はもう終わりではないか!」

「何をおっしゃいますか、陛下、」力づけるように言うと、スピトルワースは、大きな巻き物を広げました。そこには、恐ろしいイッカボッグの絵がかいてありました。

教授は説明しました。一度死んでしまったイッカボッグからは、二頭のイッカボッグが生まれるのだと。

「それは信じがたい、そんなことがあるのか。」フレッドは、か細い声でいいました。

すかさずスピトルワースが、言いました、

「信じがたいことなのです。愚か者の庶民は、ばかげたおとぎ話だといって笑います。

これを信じることができるのは、数少ない最も頭のいい人だけなのです。」

 

フレッドはもちろん、愚か者呼ばわりされるわけにはいかず、こう言ったのです、

「教授の言うことなら正しいのであろう。だが、一頭倒しても二頭に増えるのなら、どうやって退治するというのだ?」

そこでスピトルワースは、二つ目の巻き物を広げました。そこには、コルヌコピアの地図が書かれていました。

北のてっぺんには、イッカボッグが描かれていて、その周りには、何百もの剣を持った兵士の絵が描かれていました。

スピトルワースの作戦はこうです、

イッカボッグを退治するのではなく、イッカボッグが、沼地から出られないようにすること。そのためには、イッカボッグ特別防御軍を立ち上げ、たくさんの兵士を送って、パトロールさせなければならない。

そのためには、兵士の制服、武器、馬、給料、訓練、食事、宿、治療、危険費、誕生日プレゼント、メダル・・が必要となり、それには、約1000金貨が必要となる。

「1000金貨?」フレッド王は聞き返しました、「それはたいそうな金だ。だが、私の安全、いや、国の安全を守るためなら・・」

「ひと月に1000金貨はお安いものでございます。」スピトルワースが、付け足しました。

「ひと月に1000金貨??」フレッドは声を上げました。

「そうでございます、陛下、」スピトルワースが、言いました。

「本気で国を守ろうとすれば、費用はかなりのものになります。ですが、陛下、もし武器の数を少し減らして・・・」

「いやいや、そうは言っておらん・・」

「もちろん、陛下にすべての費用をお出し頂こうとは思っておりません、」スピトルワースが続けた。

「そうなのか?」フレッドは、少しほっとして言いました。

「もちろんでございます。それではあまりにも不公平です。イッカボッグ特別防御軍は、国民すべてにとって利益となるのです。国民に、「イッカボッグ税」を課するべきです。

毎月一件につき1金貨を集めるのです。もちろんそのためには、新たに集金係をやとって訓練しなければなりません、でももし2金貨集めることにすれば、その費用もまかなえます。

「すばらしい、スピトルワース!」フレッド王は言いました。「お前はたいしたやつだ。毎月2金貨ー

それなら誰も文句はなかろう。」

イッカボッグ3

 

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