本文中の挿絵は、子供たちからの応募作品の中から掲載させて頂きました。内容は抜かしているところもたくさんあり、荒っぽい訳なので、本が出版されたら、みなさん、ぜひ本物を楽しんでくださいね。
本の目次と登場人物の紹介は、「JKローリング新作「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲」をご覧ください。
(注)この記事内のカタカナ表記を含む表現文字は「どら雲」独自のもので、正式表記とは異なりますのでご了承ください。
「イッカボッグ」第二章:イッカボッグ
イッカボッグの伝説は、ずいぶんと昔からマーシュランドの人たちによって語り継がれ、知らない人はいないというほどでした。
色んな人が色んな風にイッカボッグのことを伝えたのですが、それはこんな風でした。
イッカボッグはコルヌコピアの北のてっぺんにある、だれも危なくて入らない沼地に住んでいて、子供と羊を食べて生きていました。
時には、迷い込んできた大人をさらっていくこともありました。
イッカボッグは、ヘビのような姿だという人もいれば、ドラゴンやオオカミみたいだという人もいました。
イッカボッグは不思議な力をもっていると言われていました。
人間の声を真似て旅人をおびき寄せて捕まえたり、
傷をおわせても、すぐに治ってしまったり、
まっぷたつにすると、2匹のイッカボッグになったり。
そして空を飛んだり、火を噴いたり、毒を飛ばしたり。
それはそれは、いろんなことが言い伝えられていました。
「言うことを聞かないと、イッカボッグに食べられちゃうぞ」
大人たちは、そう言って子供たちを怖がらせるのでした。
イッカボッグが怖くて、悪い夢にうなされてしまう子供もいたくらいです。
バート・ビーミッシュも、そんな子供のひとりでした。
お隣のダブテイル一家が、遊びに来たときも、
ダブテイルのおじさんが、イッカボッグの話をしてみんなを怖がらせ、
その夜、5歳のバートは、怖い怪物の夢を見て、
泣きながら目を覚ましたのです。
部屋をのぞいたお母さんは、バートを膝にのせて、
「イッカボッグなんていないんだよ、作り話なんだから怖がらなくていいんだよ」
と、なだめたのでした。
ダブテイルのおじさんと、バートのお母さんは、幼なじみでした。
バートが悪い夢を見たのは、自分のせいだと思ったダブテイルのおじさんは、
バートに、イッカボッグのおもちゃを作ってあげました。
ダブテイルのおじさんは、ショーヴィルでいちばんの大工さんだったのです。
にっこり笑った、でっかい足のイッカボッグのおもちゃを、バートはとても気に入りました。
この時は、
イッカボッグの伝説のせいで、コルヌコピアの国がとんでもないことになってしまうなんて、
バートもバートのおかあさんも、ダブテイルのおじさんも、コルヌコピアの国の誰ひとりとして、
想像すらできないのでした。
コルヌコピアは、世界で一番しあわせな国なのです。
イッカボッグに何ができるというのでしょう?