本文中の挿絵は、子供たちからの応募作品の中から掲載させて頂きました。内容は抜かしているところもたくさんあり、荒っぽい訳なので、本が出版されたら、みなさん、ぜひ本物を楽しんでくださいね。
本の目次と登場人物の紹介は、「JKローリング新作「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲」をご覧ください。
(注)この記事内のカタカナ表記を含む表現文字は「どら雲」独自のもので、正式表記とは異なりますのでご了承ください。
「イッカボッグ」第三十一章:消えた肉屋
その夜、暗闇の中を、ローチ大尉に率いられた一行が、黒い服に身を包み、ショーヴィルを出ました。
一行の中ほどを走る荷馬車には、大きな布でおおわれたものが積まれていました。鋭い爪とうろこのある、巨大な木製の足型です。
ようやく一行は、バロンスタウンの郊外に到着しました。馬から降りたのは、スピトルワースに選ばれた、イッカボッグ特別防御軍の兵士たちでした。兵士たちは、馬の足音がしないように、そして馬の足跡が残らないように、馬の足に袋をかぶせました。そして、荷馬車から巨大な足型を降ろすと、肉屋のタビー・テンダーロインが住む家のそばに運びました。肉屋の家は、近所の家からは、少し離れたところにありました。
何人かの兵士は、馬をくくりつけると、タビー家の裏口にしのびより、扉をやぶって中に入りました。残りの兵士たちは、家の裏門の回りで、巨大な足型を泥んこの地面に押しつけていました。
5分もしないうちに、縛られて猿ぐつわをかまされた、タビーとタビーの妻が、家から運び出され、荷馬車に放り込まれました。
もうおわかりかもしれませんが、タビーと彼の妻は、もうすぐ殺されてしまいます。そして、プロッド二等兵がデイジーを殺して埋めるはずだった森の中に、埋められることになるのです。
スピトルワースが生かしておくのは、役に立つ者だけでした:ダブテイルさんは、イッカボッグの足型が壊れたら修理しなければならないし、グッドフェロー大尉と仲間は、またいつかイッカボッグについて嘘の証言をする時がくるかもしれません。
肉屋に関しては、何も役に立ちそうになかったので、殺すようにと命じたのです。
気の毒なのはテンダーロイン夫人です。スピトルワースは気にもとめませんでしたが、テンダーロイン夫人は、とても優しい人で、よく友達の子供の面倒を見たり、街のコーラスで歌ったりしていました。それだけは、知っておいてあげてください。
テンダーロイン夫妻を連れ出したあと、兵士たちは、家中を荒らし、家具を壊しました。怪物がやったように見せかけるためです。他の者は、裏の塀を壊して、ニワトリ小屋のあたりに、たくさんの巨大な足跡をつけました。怪物が、にわとりを襲ったように見せかけるためです。
ブーツと靴下を脱いで、はだしの足跡を残す者もいました。タビーが、にわとりを守ろうと外に飛び出してきたように見せかけるためです。その兵士はそのあと、一羽のにわとりの首を切ると、血と羽根をそこらじゅうにばらまいて、残ったにわとりを全部、小屋から逃がしてしまいました。
そのあと、またたくさんの巨大な足跡をつけて、怪物がタビーの家から乾いた土のほうに逃げ去ったように見せかけると、
兵士たちは、肉屋の夫婦が放り込まれた荷馬車に、巨大な足型を積み込んで、馬にのり、暗闇の中に、消えていきました。