イッカボッグ・訳 by どら雲

JKローリング「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲:第26章

イッカボグ

 

本文中の挿絵は、子供たちからの応募作品の中から掲載させて頂きました。内容は抜かしているところもたくさんあり、荒っぽい訳なので、本が出版されたら、みなさん、ぜひ本物を楽しんでくださいね。

本の目次と登場人物の紹介は、「JKローリング新作「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲」をご覧ください。

(注)この記事内のカタカナ表記を含む表現文字は「どら雲」独自のもので、正式表記とは異なりますのでご了承ください。

「イッカボッグ」第二十六章:ダブテイルさんの仕事

その次の朝、

デイジーは学校に行っていて、ダブテイルのおじさんは、仕事場で忙しくしていました。

その時、ローチ少佐が、訪ねてきたのです。ダブテイルさんは、ローチが、前に自分たちが住んでいた家に住んでいて、ビーミッシュ少佐のあとに衛兵隊長になった男だと知っていました。

中に入ろうともせずに、少佐は言いました、「ダブテイル、宮殿で急ぎの仕事だ、王様の馬車の車軸が壊れてしまったのだ、明日までに必要だ。」

「もうですか?」ダブテイルさんは言いました、「先月修理したばかりですよ。」

「蹴られたのだ、馬車の馬に。すぐに来てくれるか?」

「もちろんです。」ダブテイルさんは言いました。王様の仕事を断るわけにはいきません。

仕事場に鍵をかけると、日差しのまぶしい「街中の街」の通りを、あれこれと話しながら、ローチについて行きました。

馬車が停めてある、王さまの馬小屋の入り口あたりには、五,六人の兵士がぶらぶらしていました。ダブテイルさんとローチ少佐が来ると、みんなが、ふたりの方に目を向けました。兵士のひとりは空っぽの布袋をもっていて、もう一人は、ロープを持っていました。

「おはようございます。」

ダブテイルさんがそういって通り過ぎようとしたその時、何がなんだかわからないうちに、ダブテイルさんは、頭から布袋をかぶせられ、手首をうしろで縛られてしまいました。ダブテイルさんは、強い男です、抜け出そうともがいたのですが、その時、ローチが耳元でつぶやきました。

「声を出すな、さもないと、お前の娘が痛い目にあうぞ。」

ダブテイルさんは、口を閉じ、兵隊に従いました。何も見えませんでしたが、宮殿に入って、二階分の急な階段を降り、さらにもう一階降りると、そこは、ぬるっとした石の床で、ひんやり冷たい空気が漂っていました。

牢獄。

おじさんがそう思ったとき、鉄の鍵が回って、鉄格子がガチャンと音をたてました。ダブテイルさんは、冷たい石の床に押し倒され、誰かが頭から、布袋をはずしました。

回りは真っ暗で、ダブテイルさんは、何も見えませんでした。それからひとりの兵士が灯りをともすと、おじさんの目の前には、ぴかぴかに磨かれたブーツがありました。そして見上げると、そこには、スピトルワース公が笑みを浮かべて立っていたのです。

「おはよう、ダブテイル、」スピトルワースは言いました。

「お前に頼みたいことがある。うまくやれば、すぐに娘の待つ家に帰らせてやろう。もし断ったら、あるいはうまくできなかったら、その時は、二度と娘に会えるとは思うな。わかったか?」

六人の兵士とローチ少佐は、剣を持って、壁に並んで立っていました。

「はい、公爵、」低い声でタブテイルおじさんは言いました、「わかりました。」

牢獄

「よろしい。」スピトルワースがそう言って体を動かすと、そこには、巨大な木、ポニーほどもある木の幹が置かれていました。すぐ横のテーブルには、大工道具が一式、置かれていました。

「ダブテイル、この木を使って、巨大な足を彫ってもらいたいのだ。尖った爪を持つ怪物の足だ。その足に、長い取っ手をつけてくれ。それを持って馬に乗り、柔らかい地面に足跡をつけられるようにな。大工ならどうすればいいかわかるな?」

ダブテイルさんとスピトルワースは、じっとにらみ合いました。

もちろん、ダブテイルさんは、何が起こっているのか、はっきりとわかっていました。イッカボッグがいるという偽の証拠を作れと命じられたのです。

ダブテイルさんは恐れました、偽の足を作ったことを誰かにばらしてしまうかもしれないのに、スピトルワースが、本当におじさんをここから出してくれるのでしょうか。

「誓っていただけますか、公爵、」ダブテイルさんは静かに言いました、「この仕事をすれば、本当に娘には手を出さないと誓っていただけますか?そして私を家に帰してくださると?」

「もちろんだ、ダブテイル、」スピトルワースは軽くそう言うと、監獄の扉のほうへ歩いて行きました。「さっさと仕上げれば、さっさと娘に会えるのだ。」

「大工道具は毎晩、回収して、朝にまた持ってくるからな、囚人が穴でも掘って逃げ出しては困るからな。では頑張ってくれたまえ、ダブテイル、しっかり働くのだぞ、足が出来上がるのを楽しみにしておる!」

そうして、ローチがダブテイルさんを縛っていたロープを切って、ランプを壁の金具に押し込むと、スピトルワース、ローチ、そして兵士たちはみんな、そこから出て行きました。

鉄の扉が音をたてて閉まり、鍵がかけられました。

残されたのは、ダブテイルさんと、巨大な木の幹、木彫りのノミ、そしてナイフだけでした。

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