イッカボッグ・訳 by どら雲

JKローリング「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲:第15章

イッカボグ

JKローリングのイッカボッグ

本文中の挿絵は、子供たちからの応募作品の中から掲載させて頂きました。内容は抜かしているところもたくさんあり、荒っぽい訳なので、本が出版されたら、みなさん、ぜひ本物を楽しんでくださいね。

本の目次と登場人物の紹介は、「JKローリング新作「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲」をご覧ください。

(注)この記事内のカタカナ表記を含む表現文字は「どら雲」独自のもので、正式表記とは異なりますのでご了承ください。

「イッカボッグ」第十五章:王様のご帰還

翌朝、

一行がショーヴィルに向かう頃には、

誰かがイッカボッグに殺されたという噂は、橋を越えてバロンスタウンに広がり、

首都ショーヴィルにまで広がり始めていました。

シュービルは、北のてっぺんにある沼からは一番遠いところでしたし、そこに暮らす人々は、コルヌコピアの中でも、教育のある知識階級の人たちだったので、噂ばなしを聞いても、すぐには信じませんでした。

イッカボッグが本当にいるなんて馬鹿げた話だという人もいましたし、知ったかぶりをするのはよくないという人もいました。

噂には尾ひれがついて、ある人は、イッカボッグが3人殺したとか、ある人は、誰かの鼻がもぎ取られただけだとか、色々と噂するのでした。

けれども、「街中の街」では、みんな心配もしていました。特に、衛兵隊の妻や子供達、友達は、心配していました。

でも、もし兵士に何かあったら、王様がすぐに連絡を送ってくださるはずだと、お互いに励まし合っていたのです。学校でも噂が広まっていたので、バートも心配で、宮殿の台所にお母さんを訪ねてやってきたのですが、その時も、ビーミッシュ夫人は同じように説明してバートを安心させたのです。

「お父さんに何かあったら、王様が報せを送ってくれたはずよ。」そうバートに言うと、「ほら、特別なおやつ、食べなさい。」ビーミッシュ夫人はもうすぐ帰ってくる王様のために、「天国の願い」を作っておいたのですが、ちょっと形が悪くなったものをバートに差し出しました。バートは息をのみました(天国の願いは、年に一度、誕生日の時にしか食べられなかったからです)、そして小さな焼き菓子にかじりつきました。とたんにバートの目には感激の涙が溢れました、美味しさが口いっぱい広がってまるで天国にいるようです。心配事もみんな溶けてどこかに消えてしまいました。

バートは、凛々しい軍服を着たお父さんが誇らしげに帰ってくる姿を思い浮かべていました。はるか遠い沼地で王様の軍隊に何が起こったのか、お父さんに聞かせてもらおう、そして明日の朝は、きっと自分も学校で注目の的になるにちがいない、そう考えていました。

陽も暮れかけた頃、王様の一行はショーヴィルの街に到着しました。

今回、スピトルワースは、街の人々に外に出るなとは命じませんでした。

衛兵隊の死体と共に帰ってきた王様の姿を見て、ショーヴィルの街がパニックと恐怖に包まれるところを、王様にしっかりと感じさせたかったからです。

ショーヴィルの人々は、疲れ切って情けない顔をした一行が、近づいてくるのを、静かに見守っていました。そして、鉄銀の馬に括りつけられた死体の包みを目にして、息をのむのでした。

王様に対する敬意なのか、死者に対する敬意なのか、一行が通り過ぎる細い石畳の通りのわきで、男たちは帽子を脱ぎ、婦人たちは膝まづくのでした。

デイジー・ダブテイルは、まっさきに気づきました。

ビーミッシュ少佐の馬を見つけたからです。

先週のけんか以来、デイジーはバートと話していませんでしたが、そんなことも忘れて、デイジーは走り出しました。バートが見るまえに、バートにしらせなきゃ。

でも、人ごみでなかなか進めません、デイジーは、馬のスピードについていけませんでした。

バートとビーミッシュ夫人は、家の前の宮殿の壁の影に立って待っていました。

ビーミッシュ夫人は、人々の様子を見て、何か不安な気持ちになりました。

それでも、王様から何の知らせも届いていないのだから、彼女の愛する夫は、もうすぐ無事に帰ってくると、信じていました。

一行が角を曲がってきた時、ビーミッシュ夫人は、夫の顔を探しました。そして最後のひとりが通り過ぎたとき、血の気が引いてしまいました。そして目に入ってきたのです、ビーミッシュ少佐の鉄銀の馬に括りつけられた死体が。

バートの手を握ったまま、ビーミッシュ夫人は、気を失って倒れてしまいました。

-イッカボッグ・訳 by どら雲
-, ,