本文中の挿絵は、子供たちからの応募作品の中から掲載させて頂きました。内容は抜かしているところもたくさんあり、荒っぽい訳なので、本が出版されたら、みなさん、ぜひ本物を楽しんでくださいね。
本の目次と登場人物の紹介は、「JKローリング新作「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲」をご覧ください。
(注)この記事内のカタカナ表記を含む表現文字は「どら雲」独自のもので、正式表記とは異なりますのでご了承ください。
「イッカボッグ」第十一章:北へ向かう
フレッド王の一行は、ショーヴィルの街を出て北へ向かいました。
一泊目は、クルズブルグ、二泊目はバロンスタウン、三泊目はジェロボーム。
王様は、格別の宿に泊まりましたが、スピトルワース公とフラプーン公は、粗末な部屋で寝ることになりました。
ずっと馬の背に乗っての長旅で、スピトルワース公はお尻が痛くてたまりません。フラプーン公は、行く先々で食べ過ぎ飲みすぎで、胸やけがとまりません。
ふたりとも、どんどん機嫌が悪くなるのでした。
4日目、ついに、一行は、北の果て、マーシュランドに到着しました。
初めて見る王様の一行に、貧しいマーシュランドの人たちは、拍手や声援も忘れて、
ひれ伏してしまうのでした。
一行はさらに北のてっぺんを目指して進みました。
そして、陽も沈みかけた頃、目の前に、不気味な形の岩が顔を出している、暗くて果てしなく広い沼地があらわれました。
イッカボッグが住んでいるという沼地です。
「もう陽が沈みます。沼地は危険なので、探検は明日にして、ここでキャンプを張りましょう。」
ビーミッシュ少佐が提案しました。
しかし王様は、
「何を言っている、やっと沼地が見えたんだ、もっと先まで進もう」と張り切って言いました。
王様の命令です。
一行はさらに進みました。
そして、月が昇り、黒い雲の合間に見え隠れする頃、ついに、北のてっぺん、沼地の先っぽに到着したのです。
そこは、誰も見たことのない、荒れ果ててからっぽの、それはそれは不気味なところでした。
「なるほど、」スピトルワース公が言いました、
「こんなに地面が柔らかいと、羊でも人間でも、奥まで迷い込んだら沈んでしまうでしょう。
あの巨大な岩は、暗闇では怪物にも見えるし、草のこすれ合う音が、怪物の物音にも聞こえますなあ。」
「まさにそうだな。」とフレッド王は答えましたが、その目はずっと暗い沼地を見回していました。
岩の後ろから突然イッカボッグが飛び出してくるのではないかとでも思っているように。
「ここでキャンプを張りましょう、こんなに暗くては怪物もどきの岩でさえ見えません。」
そう言われ、フレッド王は、残念そうにうなづきました、「そうしよう・・それにしても、やけに霧が濃くなってきたな!」
そうです、一行が沼地を見回していたその時、突然、
音もなく、あっという間に、濃くて白い霧が、一行を包み込むように流れ込んできたのです。
そして、誰も、それに気づきませんでした。