本文中の挿絵は、子供たちからの応募作品の中から掲載させて頂きました。内容は抜かしているところもたくさんあり、荒っぽい訳なので、本が出版されたら、みなさん、ぜひ本物を楽しんでくださいね。
本の目次と登場人物の紹介は、「JKローリング新作「イッカボッグ」を訳してみた by どら雲」をご覧ください。
(注)この記事内のカタカナ表記を含む表現文字は「どら雲」独自のもので、正式表記とは異なりますのでご了承ください。
「イッカボッグ」第六章:中庭で起こった喧嘩
宮殿の後ろには、中庭がありました。
中庭には、クジャクがいて、噴水があって、歴代の王様や女王様の像が立っていました。
宮殿で働く使用人の子供たちは、学校が終わったら、その中庭でお行儀よく遊んでもいいことになっていました。
中庭には、王様のお気に入りのエスランダ令嬢が来て、子供達と遊んでくれることもありました。
そして子供達が一番喜んだのは、王様がバルコニーに出て手を振ってくれる時でした。
でも、子供嫌いのスピトルワース公とフラプーン公が通りかかったときだけは、子供達みんなが静まり返るのでした。
ある日のことです。
バートとデイジーは7歳になったばかりでした。
中庭で遊んでいると、綺麗なピンクのドレスを着た女の子が言いました。
その子は、新しく主任裁縫師になった人の娘でした、
「今日は、王様に手を振ってもらえるかしら。」
するとデイジーがこらえきれずに、
「私はもらいたくない。」とみんなに聞こえる声で言ったのです。
子供達はみんな、はっとしてデイジーを見つめました。
「そんなこと言っちゃだめだよ。」バートがささやきました。
すると、引っ込みがつかなくなったデイジーは言ってしまったのです、
「かまわないわ、王様が母さんを無理やり働かせたりしなければ、母さんはきっと今だって生きていたのよ。」
デイジーは、ずっとずっと、大きな声でそう言いたかったのです。
バートは言い返しました、「王様は、コルヌコピアの、今までで一番の王様だよ。」
デイジーも言い返しました、「ちがうわ!身勝手で、見栄っ張りで、ひどい王様よ!」
「デイジー!」バートはゾッとして耳打ちしました、
「ばかなこと・・ばかなことを言うなよ!」
「ばかなこと」このひとことが、決め手となりました。
いろんなことが頭をよぎって、気が付くと、デイジーはバートの顔をひっぱたいていたのです。
回りの子供達が、はやし立てました、「負けるなバターボール!やっちまえ!やっちまえ!やっちまえ!」
バートが怖くなって、デイジーの肩をちょっと押し返すと、デイジーは、バートに乗りかかりました。
喧嘩を止めたのは、騒ぎを聞いて飛び出してきた、バートのお父さん、ビーミッシュ少佐でした。
そこを通りかかったスピトルワース公は、
この出来事をうまく利用して、子供達が中庭で遊べないようにしてやろうと、企てるのでした。